リリアン女学院 紅薔薇の蕾
祐麒は、自宅の自分の部屋にて、学園祭の書類に自分と自分の年子の姉の役職を書いているときにふと思う、思えば自分も姉もずいぶんと立派な肩書きがついてしまったものだ、と。
姉は、学校に行く時間が数十秒でも違うだけで、現紅薔薇の小笠原祥子とは出会わないまま、自分は肩が壊れなければ花寺の高校にすら言っていなかった、花寺の源平システムを少しでも知っていればあのような選択をとってはいなかったかもしれない。
他人がどう評価を下しているかは知らないが、少なくとも自分は伝統ある花寺の生徒会長にふさわしいとは思っていない。せいぜい下っ端がいいところだろう。
それでも、任されたからには精一杯やろうとがんばってきた。他人の評価がどうであれ、最終的にそこに座ることを覚悟したのは自分なのだから。
そう考え、姉はどう考えているのだろう。
スールシステムそのものに対する理解はあるが、スールの間柄には理解はない。自分と姉は姉弟ではあるが、おそらくそれとスール(姉妹)とは似て非なるものなのだろう、くらいには思うが。
ただのスールならば問題はないだろう、しかし、小笠原祥子のスールになるということは紅薔薇の蕾になるということが付属してくる。
そして、それは、そのまま時期紅薔薇候補筆頭となる。もちろん、紅薔薇の蕾がそのまま紅薔薇になるわけではない、選挙もあり、生徒の信任を得られなければ落選もありえるのだ。
しかし、それでも現在、紅薔薇の蕾という大役を担っており、将来、紅薔薇になる可能性があるのだ、あの姉はアレで結構心配性なところがある、今は大丈夫でもそのうちつぶれるのではないか、いや、現在進行形でつぶれているのではないのか、(本人は否定するが)誰よりも実の姉を心配している祐麒としては気が気でなかった。
ならば、聞いてみよう、花寺学院生徒会にて学んだことは「わからないことはとにかく行動」である。発想力の無い自分が物事を解決するには動くしかない、というが持論である。
「なぁ祐巳、紅薔薇の蕾って大役を得たとき、どう思った?」
「いきなり何よ、それよりもドアを開けるときはノックして、着替えでもしてたらどうするの!」
向かいにある姉の部屋のドアを開け、これでもかというくらい直球に聞いてみた。この姉は遠まわしな言い方をすると通じないことが多々ある、聞きたいことがあったら多少強引でも直球で聞くのが一番である、というのは弟として10数年付き合ってきた祐麒の教訓だ。
「いやな、さっきまで学園祭関係の書類を書いていたとき、俺とお前の役職を書いていたんだが、どうにも実感がな」
書いていて子狸の顔が頭の中を占領するのだ、そういうと姉は笑って、それは私もわかる、と答えてくれた。
そして、少し考えた後答えてくれた
「正直なところ実感が無いのよね」
答えを聞いて少し驚いた、姉は確かに天然系であり普段から物事を深く考えるタイプではない。しかし、それは = 物事を考えないわけではなく、そのくせ一度考え始めたら深く考えすぎてドツボに入る性格をしている。
その姉が、「紅薔薇の蕾」という自分の役職について実感が無いとは想定外のこと。
「なんでまた、紅薔薇の蕾になってもう大分たつだろ?」
「それはそうなんだけど、どうしても実感がわかないの」
ますます不思議だ、何で?という視線を投げかけていると姉は少し頬を緩ませながら、赤らめながらこういってくれた
「紅薔薇の蕾っていうものよりも、お姉さまの妹、というのが最初に来て、それで頭がいっぱいになっちゃうの」
この姉の弟として生を受けて十数年、まさか「惚気話」を聞くことになろうとは思わなかった、かの紅薔薇様の妹になってから始めて見るようになった姉の姿である、微妙に胸がむかむかするのはなぜだろう。
「だけど、学校では紅薔薇の蕾、ていうイメージで見られることが多いだろ? プレッシャーとか感じないわけ?」
「う~ん、感じないわけじゃないんだけど、プレッシャーと同じくらいのうれしさも感じるというか」
またまた、惚気顔になってきている、自分から聞いていることだがどうにも地雷原に足を踏み込んでいるようにしか思えないが自分から聞いているのだ、最後まで聞くのが礼儀だろう、無言で続きを話すように促してみる。
「紅薔薇の蕾、て呼ばれることは、私が他の人たちからお姉さまの妹として認められていることなのよ、それがね、とってもうれしいの」
最後はまるで向日葵のような笑顔も下さった、礼を言い自分の部屋に戻る。
疑問を解決できたわけではなかったが、あれ以上話を聞いていると糖尿病になるくらいの甘い話を聞かされてしまう、切のよいところで話を終える術もまた生徒会長になってから学んだ処世術だ。
とりあえず分かったことは、姉はまだまだ「祥子様命」ということだろう。妹ができればまた違ってくるのかもしれないが今はまだお姉さまに甘えていたいのだろう。
心配しなくとも役職に対する自覚なぞ、必要とあらば周りから押し付けられるものだ、それに幸いなことに姉の同級生にして現白薔薇の藤堂志摩子嬢は優秀だ、現時点で白薔薇ならば来年も当然白薔薇、友人関係も良好らしいので姉をフォローしてくれるだろう。
少なくとも、最後に惚気話に持っていけているのだ、現時点ではプレッシャーにつぶされることも無いだろう。
もしものことがあれば、それこそ愛する「お姉さま」にフォローしていただこう、それが姉をスールに選んだ責任というものだ。
そう考えながら、自分は前生徒会長に就任後フォローされたことがあったろうか、考えるとそれこそ自分がドツボにはまりそうなのでやめた祐麒であった。
あとがき
ものすごく久しぶりに書いてみた、祐巳の姉馬鹿の様子と祐麒の微妙なシスコン度を表せていたら・・・・いいなw
web拍手を送る
作者の今後の展開予想
作者(作)・・・・・というわけで、SS専用ブログを立ち上げてみました。
由乃(由)なにが「というわけで」よ・・・・
祐巳(祐)本当に・・・・
志摩子(志)・・・・・
(由)だいたい、なんでいまさら・・・・・
(祐)四月から社会人になるのにね~
(志)なんでも、社会人になるにあたり、ストレス発散の場を作ることを思いついたらしいの
(由)逆にストレスたまりそうだけど?
(祐)だいたい、この作者、SS書いたことあったっけ?
(志)ずいぶん前に、某大手サイトに投稿したことがあったけど・・・・連載物を書こうとして、3話くらい
書いたところで力尽きてるわね。
(作)・・・・・・・・本当にすいませんでした(汗)
(由)ちなみに、なんのSS書いてたの
(作)・・・・・・某宇宙戦艦ネタで・・・・
(祐)ああ、あの、主人公がアニメオタクでそのくせモテモテで映画版では養女に主役を奪われたやつね
(作)そのとおりです・・・・
(由)SS初投稿のクセに、連載に挑戦するから
(志)身の程をしらなかったんですね
(作)・・・・・・(汗
(作)今回は、身の程をしって、短編を中心として更新していこうかと
(祐)ここに、私たち三人がいるってことは、私たちが主役なの?
(由)それはそうよ、なんたって「マリみて」のSSなんだし
(作)いえ、当分は「祐麒」が主役です
(志)あら、そうなんですか
(作)はい、ぶっちゃけ、主役を男にしないと話をすすめられません
(祐)じゃあ、祐麒とそのほかマリみてキャラのCPものを書くの?
(由)どのサイトに影響されているのかわかりやすいわね
(志)どういう人たちとかしら・・・
(作)具体的には決めてません、ので、誰が書きやすいのか、書きにくい順番で紹介していきます
1:ギンナン王子
(作)好きなキャラなんですが、BLは無理です
(祐)この人と祐麒のCPは王道だけど・・・・・複雑だわ
(作)BLではなく、先輩後輩としての物語はいつか書いてみたいけどね
2:アリス
(作)ギンナン王子とは別の意味で無理です
(由)なんで?
(作)いや、この子との場合・・・BLというジャンルなのかと・・・・
(志)アリスの場合は心が女の子ですからね
(作)別の意味で、テーマが深くなりそうなので・・・・・
3:栞
(作)純粋にかけない・・・・祐麒との絡ませ方が・・・・
(由)原作の流れだと、どうやっても絡まないふたりだしね
(志)リリアンから去っていますし、お姉さまとの関係もありますからね、書くのは難しいでしょう
(祐)さすがに、聖さまと取り合ったら負けるしね。
4:静
(作)栞と似た理由ですね、やはりリリアンから離れていることが難点、ただし、祐麒と絡ませようと思っ
たら絶対無理、というわけではないかなとは思う。
(祐)その理由は?
(作)祐麒が在学中にリリアンにいることがあげられますし、留学ができるほどの歌手の卵、合唱部のエー
スが演奏会等に出ていないとは考えにくい、祐麒がその演奏会を聞きにいくとか(王子、アリスに連れられ
て)いろいろきっかけは作れそう。
(作)上記4人が難しい人たちですね、BLは書きませんし、リリアンから去っていった人は絡ませにくいで
すからね
逆に書きやすい人たちは、黄薔薇ファミリーかと
(由)なんでよ?
(作)いや、私の中では「黄薔薇」はノーマル「白薔薇」は百合「赤薔薇」はその中間、なんですよ。
(志)まあ、江利子様はマリみてキャラの中でも数少ない「彼氏」持ちですしね。
(作)その他の三人もキャラ的にノーマルCPを書きやすい、さらにいうなら、絡ませやすいと思われます
(作)逆に白薔薇は難しい、比較的「乃梨子」は書きやすいかと
(祐)あれ、乃梨子ちゃんってどちらかというと、百合のイメージがあるけど?
(由)そうよね~、「志摩子さんラブ」のイメージよね
(志)ふ、二人とも(真っ赤)
(作)そうなんですが、共学出身者であることが一番の理由かな、中学校でノーマルカップルを見たことが
あるでしょうから、自然と祐麒をそういう対象としてみるのではないかと。
(作)紅薔薇は、ノーマルかどうか毎回悩む、祐巳の場合は論外ですし
(由)ある意味、一番のアブノーマルCPよね
(作)祥子に関しては「男嫌い」は公式ですが、それと同じように「祐麒は大丈夫」も半ば公式ですし
(志)祐巳さんの関係で絡ませやすいですしね
(作)男嫌いだけど、特定の男性なら・・・・というのは王道ですし。
(祐)(む~~)
(作)CPで書きやすいのはどれか・・・こんな感じでしょうか
(由)で、いつから書くの?
(作)四月までに一本は書いておきたいです・・・・仕事が始まる前には・・・・
(志)相手はどなたにするんです?
(作)王道でいくか、無謀に挑戦するかを思案中です
(祐)無理しないで王道にしなよ
(作)がんばって作品を・・・・書かないとリンクに登録申請もできないしね
(作)まあ、昨日、つたないものですがSSをだしたわけです
(祐)あれを、祐麒SSとして認識していいものかな?
(由) どちらかというと、アリスSSよね
(作)やはり、書いてみて感じたことは、ネタの整理をしないと無理ってことですよ
(志)それって、基本のことではないのですか?
(作)いや、頭の中で考えること、絵にしていることを実際に文字におこす作業ってとても難しいんだ
(作)なので、今回は主要キャラごとにどのようなネタになるのか、大まかな地図を書いておこうかと思ってね
(由)成長と見るべきかしら?
(祐)微妙なライン・・・・・
(志)まあまあ、お二人とも
(作)(汗)じゃ、じゃあ、まずは薔薇ファミリーから
紅薔薇ファミリー
容子・祥子・祐巳・瞳子・・・・・・番外:柏木・可南子
(祐)まて!
(作)なにか?
(祐)なぜに、ギンナン王子がいますか?
(祐)ま、まずは、ハンマー(100t)を下ろそう
(由)そうよ祐巳さん
(志)とどめは、話を最後まで聞いてからにしましょう・・・とどめはいつでもさせるわ
(祐)・・・・・(しぶしぶ、ハンマーを下ろす)
(作)なんで、柏木がいるのか、単純に言えば、どのファミリーと関係が深いのか、ということなんだよね
(由)そりゃ、祥子様の(元)婚約者だけど
(作)だから、ファミリーとは、今回の意味合いは「系統」になるんだ
(作)現実問題、柏木がいて不思議じゃないのは紅薔薇ファミリー時だしね
(作)もうひとつ、聖という関係もあるが、やはり、一番無理がないのは紅薔薇だし
(祐)なんか、納得ができない
(作)ま、まあ、それは今後の展開を見て判断を・・・・・
(祐)・・・・・へんなこと書いたら・・・・・(100t)
(作)い、イエッサー
(志)(イエッサーって男性上官向けの台詞だけど・・・・今言うと祐巳さんが怒るからやめておこう)
(作)そ、それで、紅薔薇と祐麒をどうやって、絡ませるのか、普通に考えれば、祐巳・柏木の両名がきっかけとなります
(祐)それは否定しないけど
(由)まあ、方や肉親、方や先輩、だもんね
(作)恋愛、という要素さえ考慮しなければ、祐麒と絡ませて一番無難なファミリーだと思う。
(作)テーマは家族愛、てところ
(祐)柏木さんが・・・・家族愛?
(由)び、微妙な・・・・
(作)そう? 個人的にはそこまで無理はないと思うよ。
(作)原作での柏木は、「相手の気持ちを配慮しない、理解できない」という欠点があるにしろ、親戚であり、おそらく妹
分の祥子に対しては、彼なりの思いやりを見せていたと思う。
(作)祥子に対する愛情もどちらかというと、家族に対する愛情に近いのでは?と邪推しているし
(志)言いたいことはわかりますが
(由)それだけで、家族愛ってのもね~
(作)テーマの最大の理由はもちろん、祐巳が祐麒と家族であることだよ
黄薔薇ファミリー
江利子・令・由乃・菜々・・・・・・番外:山辺
(由)まあ、山辺先生がいるのは、柏木の時から予想したけど
(祐)山辺先生はそこまで違和感ないでしょ
(志)婿入りしたわけですし
(由・祐)い、いや、婿入りしたけでは・・・・
(作)黄薔薇のテーマは「正当な恋愛」でしょうか
(由)また、わけのわからないものを
(作)典型的な恋愛話を書くのならば、黄薔薇ファミリーが一番
(作)年上年下同年代、ボーイッシュに病弱、なんてのもそろってますからね
(由)・・・・・いうに事欠いて、ボーイッシュって
(作)その上、令は中身はマリみてキャラの中でもトップを争う女の子だしね
(作)王道、典型的、基本的な恋愛話を書くときは一番楽なファミリー、唯一、江利子がきついけど
(作)それ以外は問題なし
(作)実際、ネットでSS呼んでいる限り、黄薔薇って男女CPで一番多いんじゃないかな?
(祐)そういえば、そうだね
(志)祐麒さんSSの大手サイトでも、取り扱っていることが多いわ
(作)非公式男女CPでは、TOP3に入ると思います
白薔薇ファミリー
聖・志摩子・乃梨子・・・・・・番外:栞・静
(作)ちなみにテーマは「祐麒、がんばって」
(志)・・・・・なんでです?
(作)いや、とりあえず、各人のキャラを考えると、祐麒と絡ませる上で薔薇ファミリーの中でも難解な人たちがそろってんのよ
聖・・・・・いわずもがな、同姓嗜好者、さらに恋愛となると栞との思い出が・・・
志摩子・・・もともと、祐麒との絡みがすくな上に、シスターになろうと考えるほどの信仰の持ち主、祐麒のライバルが信仰心?、さらに言うなら、おそらく恋愛に対し一番消極的なタイプ
乃梨子・・・実は白薔薇ファミフィーの中で一番祐麒と絡ませやすい、ただし、場合によっては「志摩子さんラブ」が邪魔をする?
栞・・・・・無理(初回参考)
静・・・・・同姓嗜好者(だと思う)であり、日本にいない
(祐)あらら
(作)まあ、私の独断と偏見ですが
(由)でも、ネットだとそこまでマイナーなCPじゃないでしょ、白薔薇って?
(作)ええ、乃梨子を筆頭に意外と数はあります
(作)でもやはり皆さん苦労してるように思えますよ
(志)・・・・・(苦笑・・・するしかない状況)
(作)番外二人はともかくとしても、なかなか
(祐)でも、それって黄薔薇も同じじゃないの?
(作)黄薔薇以上に、祐麒との絡みが思いつかないんですよ
(由)そうかな~?
(作)まあ、半分以上は私のイメージが邪魔しているのですが
(志)あまり、先行したイメージで捉えられても、私たちも反応に困ります
(作)ん~、言いたいことはわかるが、どうしてもね~
(祐)まあ、この作者が何気に一番好きな系統らしいんだけど
(志)あら、そうなんですか・・・・その割にはかけないんですね?
(作)好きなんですが、どうしてもね~
(由)まあ、自分でかけないからこそ、他のサイトで見つけたときには狂喜乱舞しているんでしょうけど
(作)アハハハハ
(祐)修行不足なんだね
(志)好きなものこそ上手になれ、ということは作者に限って言えば当てはまらないんですね
(作)アハハハハ(泣
報道組み
(作)新聞部&写真部の面々ですね
(祐)蔦子さんや真美さんたちだ
(由)このあたりはどうだろうね
(作)祐麒と直接関係はないですが、「報道」という武器があるので以外と絡ませやすい
(志)なんでですか?
(作)文化祭の取材、てのは王道だよね、部活の取材だ~とかで花寺に行くこともできるし
(祐)わざわざ他の学校に取材にいくかな?
(作)交流があり、なおかつ男子校、女子高ですから
(作)原作じゃあまりないけど、かっこいい男子が部活で活躍してる、とかなら、瓦版ネタにはなりそうかなっと
(志)新聞部はともかく、写真部のお二人は? 蔦子さんが男子をわざわざ取りに行く姿が想像できないけど?
(作)新聞部の付き合いで行く、ていうシュチュで、新聞部も写真撮るだろうけど、本格的なものなら写真部に援軍を、ということは流れ的にはそこまで難しくはない
(由)まあ、妥当なところね
その他
(由)その他っていたっけ?
(作)有名?どこでは「桂」、そこそこで「田沼」
(志)桂さんはたまにSSがありますけど、田沼さんはないですね
(作)そうだね、桂はたまに見るね、桂は祐巳つながりで出すことは可能
(祐)まあ、無理じゃないかな、初期のころはよく話してたし
(作)まあ、桂でぎりぎりかな、田沼とか、その他、モブではないが、名前がある程度、のキャラは・・・・・下手をすればオリジナルキャラになってしまうし
(作)まあ、今後も基本的に1薔薇ファミリー、2報道組み でSSを書いていきます
(由)かけるのかしら?
(祐)さあ?
(志)お手並み拝見ですね
(作)・・・・・・・・・・
あれはきっと初恋だったのだろう、あの人を熱烈に思ったわけでもない、どうすれば自然に会えるのかなどを考え、実行したわけではない。
常に思い、胸を熱く、心臓の鼓動が激しいリズムを刻んでいたわけでもない。
ただ、会えば胸に微かに熱がこもり、ふとしたことで思い出すとうれしくなる、そして、ふと、切なくなくる。
そんな、微かで淡い思いではあったが、今思えば、あれは間違いなく、俺の初恋だったのだ。
「なあ、初恋っていつだった?」
昼休み、生徒会室にていつものメンバーとご飯を食べていたら、小林がいきなりそんな質問をしてきた。
この男、好きなこと(数学)に関していえば、きちんと道筋をとり万人にわかりやすいように話すくせに、普段はいきなり話を変える、いや、ふっとばすことがある。
「なんだよ、いきなり」
「そうよ、話し飛びすぎよ」
「いやな、○ウンタ○ンのバラエティを見ていたんだが・・・・」
話を聞いてみると、そのバラエティにてゲストの初恋話を聞きだし、初恋相手をゲストとして呼び出す、
というなんともまぁ微妙なコーナーが存在するらしい。
「で、その話をなんで今するんだ?」
「いや~、本当にふと気になって」
まったくもって呆れるしかない、しかし、こういう話に食いつくのがわが花寺生徒会の紅一点?ともいえるアリスである。
「そうね、私は・・・・・」
アリスの初恋は小学校時代に遡るという。当時、アリスはまだ自分が心が女性であり、男性を好きである、ということを意識しできておらず、普通の男子であると思っていたが、ふとしたときに感じる同級生男子への気持ちにとまどい、自分は変なのではないか?っと疑問に思っていたそうだ。
「やっぱり最初は受け入れられないのよ」
そう言って顔を曇らせるアリス、今でこそ本当の自分を出せてはいるが、こうなるまでにどれほどの苦労があったのだろう、どれほどの苦悩を持ったのだろう、俺には到底わからない、話をふった小林もすこし気まずそうだ、アリスは、そんな俺たちを見て気を使ったのか、ことさら明るい声で話を続けてくれた。
そうした、自分の感情と社会の常識などの板ばさみになっていたとき、近所の公園でトレーニングをしているボクサー選手と出会った。
減量中だったのだろう、暑い日だったというのにトレーニングウェアを着込み、公園でシャドーボクシングをしていた。その姿を見たとき、その人のその姿に、ごく自然に心が引かれていた。
「男とか、女とか、そんなことを考えるスキもないほどに心に入ってきたの」
その人はそれから一週間ほど、公園で見かけたが、それからは見ることはなかったという、会えなくなってちょうど一週間が過ぎたとき、その公園でアリスは泣いてしまったそうだ。
それを経験し、自分の心は男ではないんじゃないのか、女の子なんじゃないのか、そういう意識が徐々に強まって言ったそうだ。
「へ~、恋は人を変えるんだな」
「まあ、それからが大変だったんだけど」
じゃっかんテレながら話すアリス、やはり初恋の話は誰であろうと照れるものなんだな、そう思っていたら矛先は祐麒にまで及んできた。
「いいじゃん、おしえろよ祐麒」
「ふざけんな、だれが言うか」
不満そうな小林、若干(というか目が輝いている)アリス、初恋の話なんていえるものか、おそらくもっとも恥ずかしい恋ばなだろうに。
「そういう小林はどうなんだよ」
「俺はいいの、今は祐麒の番なんだよ」
「いつ決まった!」
いっきに小林は追及モード、追尾モードに突入してきた、こうなると手がつけられなくなる。持ち前の粘り強さで聞きたいことを聞けるまでとことん粘るのだ。
このモードに突入したときの対処方法は、こちらも粘るしかない、幸いなことにアリスの話が長かったために昼休みはすぐに終わった。
「さあ、時間だ教室にもどるぞ」
そう言ってさっさと教室に向かう、後ろでは小林がぶーたれているが、そもそも自分の話をしない奴に初恋の話などしてたまるものか。
だいたい、相手が相手だ、何かが間違って、リリアンの人たちや柏木に伝わってしまったら目も当てられない。
初恋は自分の胸の中で大事にとっておこう、誰にも見せたくない宝箱のように。
ただ、間違いなく言えることは、あの人のあの姿は間違いない自分の中にずっと残るだろう。
強い思いではなく、やわらかく、ほろ苦く、それでいて切ない、そんな思いとともに。
(作)
マリ見て初SSです、だれもが持っている初恋の話をテーマにしてみました、書いてみたら、祐麒というよりも、アリスがメインの話になってしまった。
でも、これでも、祐麒SSなんです(マテ