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 あれはきっと初恋だったのだろう、あの人を熱烈に思ったわけでもない、どうすれば自然に会えるのかなどを考え、実行したわけではない。

 常に思い、胸を熱く、心臓の鼓動が激しいリズムを刻んでいたわけでもない。

 ただ、会えば胸に微かに熱がこもり、ふとしたことで思い出すとうれしくなる、そして、ふと、切なくなくる。

 そんな、微かで淡い思いではあったが、今思えば、あれは間違いなく、俺の初恋だったのだ。

 


「なあ、初恋っていつだった?」

 昼休み、生徒会室にていつものメンバーとご飯を食べていたら、小林がいきなりそんな質問をしてきた。

 この男、好きなこと(数学)に関していえば、きちんと道筋をとり万人にわかりやすいように話すくせに、普段はいきなり話を変える、いや、ふっとばすことがある。

「なんだよ、いきなり」

「そうよ、話し飛びすぎよ」

「いやな、○ウンタ○ンのバラエティを見ていたんだが・・・・」

 話を聞いてみると、そのバラエティにてゲストの初恋話を聞きだし、初恋相手をゲストとして呼び出す、

というなんともまぁ微妙なコーナーが存在するらしい。

「で、その話をなんで今するんだ?」

「いや~、本当にふと気になって」

 まったくもって呆れるしかない、しかし、こういう話に食いつくのがわが花寺生徒会の紅一点?ともいえるアリスである。

「そうね、私は・・・・・」

 アリスの初恋は小学校時代に遡るという。当時、アリスはまだ自分が心が女性であり、男性を好きである、ということを意識しできておらず、普通の男子であると思っていたが、ふとしたときに感じる同級生男子への気持ちにとまどい、自分は変なのではないか?っと疑問に思っていたそうだ。

「やっぱり最初は受け入れられないのよ」

 そう言って顔を曇らせるアリス、今でこそ本当の自分を出せてはいるが、こうなるまでにどれほどの苦労があったのだろう、どれほどの苦悩を持ったのだろう、俺には到底わからない、話をふった小林もすこし気まずそうだ、アリスは、そんな俺たちを見て気を使ったのか、ことさら明るい声で話を続けてくれた。
 
 そうした、自分の感情と社会の常識などの板ばさみになっていたとき、近所の公園でトレーニングをしているボクサー選手と出会った。

 減量中だったのだろう、暑い日だったというのにトレーニングウェアを着込み、公園でシャドーボクシングをしていた。その姿を見たとき、その人のその姿に、ごく自然に心が引かれていた。

「男とか、女とか、そんなことを考えるスキもないほどに心に入ってきたの」

 その人はそれから一週間ほど、公園で見かけたが、それからは見ることはなかったという、会えなくなってちょうど一週間が過ぎたとき、その公園でアリスは泣いてしまったそうだ。

 それを経験し、自分の心は男ではないんじゃないのか、女の子なんじゃないのか、そういう意識が徐々に強まって言ったそうだ。

「へ~、恋は人を変えるんだな」

「まあ、それからが大変だったんだけど」

 じゃっかんテレながら話すアリス、やはり初恋の話は誰であろうと照れるものなんだな、そう思っていたら矛先は祐麒にまで及んできた。

「いいじゃん、おしえろよ祐麒」

「ふざけんな、だれが言うか」

 不満そうな小林、若干(というか目が輝いている)アリス、初恋の話なんていえるものか、おそらくもっとも恥ずかしい恋ばなだろうに。

「そういう小林はどうなんだよ」

「俺はいいの、今は祐麒の番なんだよ」

「いつ決まった!」

 いっきに小林は追及モード、追尾モードに突入してきた、こうなると手がつけられなくなる。持ち前の粘り強さで聞きたいことを聞けるまでとことん粘るのだ。
 
 このモードに突入したときの対処方法は、こちらも粘るしかない、幸いなことにアリスの話が長かったために昼休みはすぐに終わった。

「さあ、時間だ教室にもどるぞ」

 そう言ってさっさと教室に向かう、後ろでは小林がぶーたれているが、そもそも自分の話をしない奴に初恋の話などしてたまるものか。

 だいたい、相手が相手だ、何かが間違って、リリアンの人たちや柏木に伝わってしまったら目も当てられない。

 初恋は自分の胸の中で大事にとっておこう、誰にも見せたくない宝箱のように。

 ただ、間違いなく言えることは、あの人のあの姿は間違いない自分の中にずっと残るだろう。

 強い思いではなく、やわらかく、ほろ苦く、それでいて切ない、そんな思いとともに。

 


(作)
マリ見て初SSです、だれもが持っている初恋の話をテーマにしてみました、書いてみたら、祐麒というよりも、アリスがメインの話になってしまった。

でも、これでも、祐麒SSなんです(マテ

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